切断/呪詛

   鏡典

   5

 音――扉を押し開けるその音。
 ジュジュが立てた乱暴な音――教会へ侵入するためのその音。
 さらに続く音――その高い天井に響く、ジュジュの靴が床を叩く音。
 ジュジュの空間把握――中央に真直ぐ伸びる道、整然と等間隔に並ぶ石柱――どこからどう見ても教会。だがどこか無味な、形式的にも思える内装。
 人影――奥の祭壇の手前に一人だけ――神官らしき男。今度は間違いなく「人」のWord。
 その男――ジュジュが入ったときからその姿を見続けていながら無言。
 そしてジュジュが道の中ほどまで来たところで、
「おや、会はもう終わったが……、礼拝かね?」
 たった今気づいたというような台詞――あまりにもわざとらしい口調。
 ジュジュはその怪しさも含めた一切を無視し、
「あなたが祭司?」
 ただ一言。
 男はそれに対して無言。
 背後に隠れたその手が、何かを探るように動いた。
「あなたが祭司ね?」
 ジュジュはもう一度言う。
「礼拝かね?」
 祭司ももう一度。
 痺れを切らしたジュジュ――もう一歩前へ。
「それ以上進んではならない」
 そこに発せられる祭司の声――俄かに緊張したような声。
「なぜ?」
「進んではならない」
 単純な応答。そこにジュジュが気づくひとつの可能性――だが、目の前にあるものと噛み合わないその結論。
 ジュジュはさらに一歩前へ。
 背後にあった祭司の手が、祭壇の下へ動く。
 ふと、ジュジュは祭司の背後に多量のWordが集まってくるのを見た。
「あなた、後ろに――」
 不意に口をついて出たそんな言葉に、ぴくり、と祭司が反応する。
「……後ろに、何かね?」
 そして音。
 ちゃき、という金属音――何かを構える音。
 ジュジュは少しだけためらったが、言葉を続ける――単純な疑問。
「――あなた後ろに、何があるの?」
 さらに音――連続して三つ。
 放たれた音――ジュジュの肩、胸、腹に吸い込まれてすぐに消える。
 ジュジュ――身体を三度、大きく痙攣させ、疑問の表情のまま祭司の姿を見た。
 そしてゆっくりと前へ倒れる。
「何と愚かな……」
 祭司の言葉――残念がるように。
 その手に握られたもの――拳銃、減音器付き。

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