髪（カミ）に愛されなかった天使。

　　 you

　ハゲた中年オヤジ天使。それは俺のことである。
　はぁ……やべえよ。ついに頭頂部だけじゃなくて側面の髪の毛もストレスでやられちゃったじゃん。もうバーコードすらできねえ。
　天使って第一印象大事なのよ。
死んだ人間を天国に導くわけだからさ。
　で、こないだ不慮の事故でなくなったかわいそうな女子高生を天国に連れて行ってやろうとしたんだよ。
　そしたらその女、「え、ハゲたオヤジじゃん」って微妙な顔しやがったんだよ！　危うくもう一度死ねって言いそうになったからね！
　……でもよぉ。やっぱ世の中ハゲてるとうまくいかないんだよ。
　髪がないせいで死んだ大人も怖いって逃げるやつがいるわけよ。
　それで職務がまっとうできない俺に神様の野朗がクビって言うんだぜ。
　てめえがこき使ったせいで俺のストレスが溜まってこんなハゲちまったんじゃねえか神のクソ野朗が！
まったくひどい話だろ。
　最近イケメン天使がわらわら入ってきてさ、やつらのほうがウケがいいんだとよ。
　まあそうだよな。俺みたいなハゲた中年オヤジより、イケメン天使に天国に送られたほうがいいもんな。
　ちくしょう。神様の野朗に仕えて３０年。野朗にこき使われストレスで髪はこのざまだ。おまけに新人イケメン天使のほうが愛されてるときてる。
　だけどこのままおめおめと引き下がるわけにはいかねえじゃん。中年オヤジ天使のプライドとして。
　だからよ、ふたつの��カミ�≠ﾌ愛に見放された俺は決めたんだよ。
　ヅラ買おって。